愛は知っていた【完】
それから数年経ち、赤服白髭の老人の正体を知った俺達は、また違った形でクリスマスを楽しむことを覚えた。
いつだか朝起きた俺の首に歪なマフラーが巻かれていたことがあったのだが、実はそれは朱里が母さんに教わって密かに編んでくれていた物だと知り、とんだサプライズには感極まって嬉し涙を流しそうになった。

この辺りからだっただろうか。
俺の中で朱里に対する見方が、妹ではなく一人の女となり始めたのは。


「ごめん、やっぱり別れよう」


すんなりとこの言葉が出た自分がおこがましい。

結局二人目の彼女とも長続きしなかった。
情事を行う男女が多い理由から性なる夜とも言われているクリスマスイヴの夜、あろうことか俺は彼女に別れ話を切り出した。
我ながら空気の読めない奴だと思った。

ただ後日年末年始に向けて実家に帰る予定がある俺にとって、このタイミングを逃すのも癪だったのだ。
なんの前触れもなく利己的な発言をした俺に彼女は言った。
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