愛は知っていた【完】
「……で、朱里は何が食べたいんだ?」
「んー、ラーメンとかパスタとか麺類系?あー、でもお寿司も捨てがたいし、パフェも食べたいかも」
「いっそバイキングにするか?」
「だめだめっ、ダイエット中なんだから!」
「おいおい、じゃあどうすればいいんだよ」


昔から人一倍食欲旺盛な朱里は欲張った挙句、頭を抱えて葛藤を起こしていた。
悩ましげに唸り声を上げる朱里の隣で、俺はつい苦笑いしてしまう。

別にダイエットするほど太ってないと思うんだけどな。
フォローのつもりで言えば、朱里はもっと二の腕を細くしたいだの、お腹の贅肉が気になるだの力強く訴えてきて、最後には、


「ファミレスのサラダバーで胃袋膨らます!」


と言い切った。
男女間で生じる理想の体型の差異には、つくづく納得いかないものがある。
雑誌モデルのようなスタイルを目指して張り切っているようだが、それ以上痩せられてもこちらとしては抱き心地が悪くなりそうで頂けない。
なんて意見しても聞き入れてもらえるような様子じゃないので、あえて黙っておくことにした。
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