愛は知っていた【完】
朱里を悲しませたくないというのもあったし、それ以上に現実を受け入れつつある自分を認めるのに気が引けていたからだ。
彼女には妹である朱里との肉愛関係を、朱里には彼女の存在自体を。
双方に事実を明かさず胸の内に秘めておくという罪悪感に、時折押し潰されそうになっては、これが最善の選択なのだと自分を正当化させることが精一杯だった。
例え自己満足だとしても、それで少しでも気楽に生きられるのなら、自分の選んだ道こそが正しいのだと信じたかった。

今更かと呆れられるかもしれないが、薄々気付いてはいたんだ。
今の俺達の特殊な仲は、世間から大きな反感を買い、まともな将来性も見込めない。公けに二人の未来を築くことは不可能に値するってことくらい、とうに分かり切っていたのだ。
だから俺は考えた。
それなら光の当たらない場所で朱里とのこれからを作っていけば良い。
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