愛は知っていた【完】
俺の出し抜けな発言に少しも顔色を変えなかった朱里は、さして驚いた素振りも見せずに会話を続けている。
これには逆に俺が意表を突かれた。
まるで全て把握していたかのような反応じゃないか。

そこである可能性が脳裏を掠めた。
ひょっとして朱里は既にこのことを知っていたのではないだろうか。
であればここまで落ち着いていられるのも頷ける。

朱里は尚も笑顔を絶やさず彼女に接していた。
その笑みが偽りのものには到底感じられない。
この後、俺は自分の憶測が正しかったことを知る。
< 59 / 79 >

この作品をシェア

pagetop