愛は知っていた【完】
「自分でやったわけじゃ、ないんだな?」
「リスカってこと?やだー、誰が好き好んで怪我するってのよ。私そこまでMじゃありませーん」


今度はおもしろおかしく笑った朱里のその笑顔に胸を撫で下ろす。
そうだよな、まさか朱里が自傷行為なんてするわけないよな。
自転車の補助輪をとる練習をしていた時も、転ぶ度に痛い痛いって泣きべそかいてたような奴だぞ。
自ら痛い思いをするようなことに手を出すわけないじゃないか。


「そこまでMじゃないって言うけど、こうやって俺にいじめられるの好きなくせに」
「んっ……だってお兄ちゃんにいじめられるの興奮するんだもん」


結局その後はいつもより積極的に求めてきた朱里を、それこそ完膚無きまで犯す勢いで抱いた。
朱里は自分のものであると証明するように、荒っぽく愛撫をして激しく腰を打ちつけた。
何度も救われたあの笑顔に、いつしか惑わされるようになっていたとも知らずに。
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