愛は知っていた【完】
矢継ぎ早に携帯の着信履歴欄を開いて、白井先生の下にあった朱里の名前を選択するなり発信ボタンを押す。
しかし向こうからは、ツーツーと規則的な話中音が聴こえてくるだけだ。
着信拒否でも設定されているのだろうか、それから間を置いてかけ直すも話中音が止むことはなかった。
居ても立ってもいられなくなった俺が、直接朱里もとに赴き真相を確かめようと決めた頃、携帯のバイブ音がメッセージの受信を知らせた。

朱里だった。本文を確認する前から、その朱里を見ただけで涙が零れそうになる。
待っていたんだぞ朱里。着信拒否するなんて酷いじゃないか。
何か悩みがあればお兄ちゃんが相談に乗ってあげるから……、


「…………え?」


“お兄ちゃんごめんなさい”

ディスプレイに表示された文字を何度も目で追い直す。
なんだ、これ。どういうことだ。
朱里、なんで謝るんだ?謝罪する理由がどこにあるんだ?
お兄ちゃん、このメールの内容がさっぱり理解できないんだが、ちゃんと教えてくれないと困るぞ。
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