愛は知っていた【完】

┗愛は知っていた

俺が必ず幸せにしてやる、なんて、酷く無責任な言葉を吐いてしまったものだ。
限りなくゼロに近い可能性のどこに何を期待すれば良いのか。

幸せの形とは人それぞれだ。
しかし俺達が望む幸福の終着点とは、どれだけ苦しみもがいても辿り着けない。
強いて言うなら世界が引っくり返って、同時に常識も覆されるようなことがあり得なければ叶うわけがないのだ。

家族でなければ簡単に手に入るはずだったものが、兄妹という壁が立ちはだかるせいで届かない。
無い無い尽くしな現状は八方塞がりと同義である。

俺はこんなにも朱里を愛おしいと感じているのに、どうして神様は二人が結ばれることを許してはくれないのだろうか。
これがもし出口の無い一本道のトンネルだったのであれば、根拠も自信もちっぽけではあるが、途中で間違いに気付いて入口まで引き返せたかもしれない。
< 71 / 79 >

この作品をシェア

pagetop