愛は知っていた【完】



そうして俺の持ち出した話に同意してきた朱里と両親に全てを打ち明けるべく、翌週の休日に実家に帰ってきた。
両親に反論されることが不安なのだろうか、玄関前で俺が来るのを待っていた朱里はどことなく陰った表情をしている。

下手をしたら父さんと激しい言い争いになりかねない。
それでも俺は自分の意思を貫き通すつもりだ。

俺がくしゃりと頭を撫でてやると、朱里は一瞬目を丸くしたあと強張っていた表情を緩めた。
目の前にある現実を打破してでも俺はこの笑顔を守ってみせる。
そう胸に誓い両親の待つリビングへ足を進めた。


「――そういうわけだから、俺はこれからも朱里と愛し合っていたいんだ」


事前に改まった話があると連絡は入れていたのだが、まさか妹と肉体関係を持っているなんて懺悔にも似たような話から始まり、本気で将来を考えていることまで吐露されるなんて、微塵も予想していなかっただろう。
俺の長い話を聞き終えた両親は、参ったように俯いていた。
不道徳な俺達の行いに呆れて二の句が継げないのか、完全に参ってしまったのか、なんにせよ苦慮しているのは間違いない。
並んで正座をし両親と向き合った俺達は、しばらく無言のまま二人の反応を黙って窺っていた。

深刻そうな面持ちで顔を見合わせている両親を前に、心が捻られたように痛む。
大切に俺たちのことを育ててくれた両親に、まさかこんな仕打ちをしなきゃいけない日がくるなんて、本当に申し訳ないとは分かっている。
だが、これ以上自分の気持ちを偽り続けるのは限界だったのだ。
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