愛は知っていた【完】
室内に気まずい空気が充満している。そんな中、重苦しい沈黙を破ったのは父さんだった。
「二人とも、落ち着いて聞いてほしいんだ」
低い声でそう話を切り出した父さんから告げられた真実に、俺はただ言葉を失った。
単刀直入に言おう。
朱里は父さんと母さんの実の子供ではない。
よって俺と朱里の間に事実上兄妹関係はないのだ。
本来朱里の両親であるべきはずだった二人は、父さんの弟とその妻にあたるそうで、朱里がまだ一歳にも満たない頃に不慮の交通事故で亡くなってしまったらしい。
不幸中の幸いとも言うべきか、その時朱里は祖母に預けられていたため事故には巻き込まれずに済んだ。
それから父さんと母さんが朱里を引き取ることになり、年の近い俺と一緒に我が子も同然の愛情を注いできたというわけだ。
おじさんやおばさんが亡くなっていたのは聞いたことがあった。
しかしその二人の間に朱里という子供がいたなんていうのは微塵も知らなかった。
黙っていて申し訳ないと謝罪した両親を前に、朱里も相当複雑な心境に置かれているようだった。
実の両親をとうの昔に亡くしていたという事実を突き付けられれば、本来その心理的ダメージは大きいはず。
何せ今まで本当だと信じてきたことが嘘だと発覚したのだから。
だが物心つく前の朱里にとって、それは有って無いような事件であり、更にそれが明らかになったことで多大な利点も生じるのだ。
「二人とも、落ち着いて聞いてほしいんだ」
低い声でそう話を切り出した父さんから告げられた真実に、俺はただ言葉を失った。
単刀直入に言おう。
朱里は父さんと母さんの実の子供ではない。
よって俺と朱里の間に事実上兄妹関係はないのだ。
本来朱里の両親であるべきはずだった二人は、父さんの弟とその妻にあたるそうで、朱里がまだ一歳にも満たない頃に不慮の交通事故で亡くなってしまったらしい。
不幸中の幸いとも言うべきか、その時朱里は祖母に預けられていたため事故には巻き込まれずに済んだ。
それから父さんと母さんが朱里を引き取ることになり、年の近い俺と一緒に我が子も同然の愛情を注いできたというわけだ。
おじさんやおばさんが亡くなっていたのは聞いたことがあった。
しかしその二人の間に朱里という子供がいたなんていうのは微塵も知らなかった。
黙っていて申し訳ないと謝罪した両親を前に、朱里も相当複雑な心境に置かれているようだった。
実の両親をとうの昔に亡くしていたという事実を突き付けられれば、本来その心理的ダメージは大きいはず。
何せ今まで本当だと信じてきたことが嘘だと発覚したのだから。
だが物心つく前の朱里にとって、それは有って無いような事件であり、更にそれが明らかになったことで多大な利点も生じるのだ。