愛は知っていた【完】



もう四月半ばだというのに、窓の外では芽吹く緑を背景に忘れ雪が見受けられる。
そんな幻想的な景色が広がる日に式を挙げた俺達。
元々血の繋がりのある兄妹で通っていたわけだから、当然周囲からは仰天の声が上がり、しかしそれ以上にたくさんの祝言をもらい、俺は純白のドレスに身を包んだ朱里に正式な形で永遠の愛を誓った。

そんな式から三年後、腹部を膨らませた朱里はマタニティウェアを着て、ソファーに深く腰掛けたまま編み物をしている。
なんでも行動に制限がかかっているゆえに時間を持て余しがちなので、暇潰しにマフラーを手編みするとのことだが、これからやってくるのは夏だから、完成しても実用するのはまだ先の話になりそうだ。
それでもハミングを奏でたりして楽しそうに作業している朱里を見ていると、この上ない愛しさが込み上げてくる。
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