君のブレスが切れるまで
 私は掴まれたままの髪を無理やり後ろへと引っ張られると、背中から倒れこんだ。


「いっ……うぅぅ……」


 あぁ……痛いなぁ。この後また蹴られるんだろうか。いつまで続くんだろう。
 そんなことを冷静に思える自分がおかしいことに気づいたのは、いつ頃だろう。
 自分が自分じゃないような、違う視点で私が私を見ているような、他人事のような、そんな感覚。暴力を振るわれるときはよくこんな感覚に陥ってしまう。それは二ヶ月程度でなったことではない、随分前からだ。


 だからこんなことを考えられる。あの人は、傘を差したあの女の子は誰なんだろう。自分のクラスで見たことがある……。
 あ、思い出した――


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