君のブレスが切れるまで
「ねぇ、奏。今日の帰り、喫茶店に付き合ってもらってもいい?」


 そう思っていた矢先、まるで私が悩んでいたのを知っていたのかのように、雨はこちらを見てそう言ってくれる。それにびっくりして返事を忘れてしまった。


 ――何が目的なの? と内心呟き、身構え、彼女を疑う自分の癖が嫌すぎる。


 雨は警戒している私に気付いたのか、そのまま話を続けてくれた。


「少し親睦を深めたいと思ったのだけど……迷惑かしら?」


 迷惑ではない。むしろ、雨のことを知れるいい機会で、望んでいた言葉だった。だけど、私は顔を伏せ、


「…………家に住まわせてくれてるのは感謝してるけど……そういう気はないから」


 やっと出た言葉は憎まれ口。仲良くなりたいと思ってるはずなのに反対のことを言ってしまう。
 せっかく雨が言ってくれたのに、どうしてこうなんだろう。こんなにいろいろとしてもらってるのに、なんて馬鹿な解答をしてしまったんだ。
 私は自分への苛立ちで、音がするほどに歯を軋ませる。


「学校近くの喫茶店で待ってる。気が向いたら足を運んで」


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