君のブレスが切れるまで
「嫌だって言ってるの! 雨は……雨は呼ばない!」


 恐怖に負けないよう、大声で叫んだ。
 この選択で私がどうなるかはわかっている。でも、きっと間違いじゃない。


「……あぁ、そうかよ!」


 怒声と共に来る、サッカーボールを蹴るような勢いを付けた蹴りが。
 私は咄嗟に顔を隠すと、鈍い音と共に両腕へ強烈な痛みが走った。


「いっ……くぅぅ! ぐぅぅぅ!」

 歯を食いしばり、その痛みに耐える。この感じは折れてなんかない。
 早く起きて、ここから逃げないと――


「ぐぁふっ! ふうっぐっぅぅうぅ!」


 吸っていた息をすべて吐き出し、今度は痛みで叫び声を上げてしまう。何が起きたのか、理解ができない。
 信じられないくらいの痛み。横腹になにか、ドスンと来るようなそんな衝撃。その一撃で私は、立ち上がることも這って動くことすらも許されなくなった。


「あっちゃー……あやかの踵落とし、もう動けないでしょ流石に……」
「ナメた口聞いてるから、つーかもうそいつ裸にして。その画像、あたしが宮城に送るわ」
「おっけー。悪いけど、裸になってもらうね? 私たちのためなのー」


 痛みで動けない中、セーラー服の上着を脱がされていく。
 私は助けてくれた雨の為に何もできず、また雨に迷惑をかけてしまうのか。あぁ……弱いなぁ、私は。こうやって何もできないまま、何も変わることすらできないのか。


 目の前が暗く、暗く落ちていく時、遠くのフェンス越しに息を切らせた女の子が見えた。
 長い黒髪で、白いセーラー服を着た、赤い眼の女の子。


 私はその光景に大きく目を見開いた。


< 111 / 270 >

この作品をシェア

pagetop