君のブレスが切れるまで

第11話 真っ白なソファ

 2017年 7月末


 気温はさらに激しさを増し、家から出られるような暑さじゃなくなっていた。だけどここ、17階の一室、雨の家は天国のように涼しい。
 空調の効いた何もないリビングの床に倒れ込むよう体を寝そべらせる。
 世間の人は一生懸命、外を歩いていたり仕事をしてたりするんだろうけど、これが学生の特権だよね。


「あぁー……生き返るー涼しいよぉ。やっと夏休みだー」
「終業式で午前中までだったけど、流石に暑かったわね。エアコンのタイマー設定しておいて正解だった」
「雨、ナイスだよ……」


 私は寝そべったまま右手とその親指を突き上げ、サムズアップなるサインをする。雨はこちらへ歩いてくるとチラっと横目で私の姿を見て、呆れたのか無表情でお風呂場へと向かっていく。


 いや、無表情なのはいつものことだけど……。


 雨と一緒に暮らしはじめて、一ヶ月くらいが経つ。
 殴られ慣れしている影響か治癒力が上がったのかわからないけど、あやかたちから受けた体の痛みも叔父に踏まれた時に負った足の痛みも、普通に生活するには何の支障もないくらいになった。
 まぁ、本当に治癒力とかが上がったわけじゃないのはわかっている。打撲などの傷が治りが早くなっているのは、雨の手当のおかげだろう。


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