君のブレスが切れるまで
 良くない傾向なのはわかる。だけど、口に出した以上、考えることをやめられなかった。
 前よりは死にたいって思う気持ちはなくなってきたと思う、これは雨のおかげかもしれない。けど、なにかあれば死にたいって考えてしまうのは癖だからか。


 ただ叔父が死んでからは、さらに死が近寄った気がする。
 あんな簡単に人は死ぬ。なかなか死なないものだと思っていたのに運が悪ければ、スッと死ぬんだ。きっと、私だって――。


「奏」
「ひゃっ!」


 後ろから急に話しかけられ、肩を跳ねさせる。
 声のした方を見てみると、バスタオルで髪を拭いている雨の姿。丈長の緩いTシャツと、下は……見えないけど、ショートパンツを履いているんだと思う。
 雨がお風呂から上がるくらいまで、考え込んでいたのか。


「あまり考え込まないようにね。明日からは夏休みよ」
「あ……うん、ごめん」


 考えていることが読まれていることを悟って謝る。


 気づくと謝るのも昔に比べたら普通にできるようになったんだなって、少しだけ嬉しくなった。だけど雨は相変わらず、無表情で何を考えているのか全然読めない。
 じっと雨の目を見つめていると、


「私の考えを読もうとしないで汗流してきなさい」
「雨……やっぱり私の心読んでない?」
「さぁ、どうかしらね」


 なんて感じで返され、そのまま自室へと戻っていく雨。
 どうかしらーとか、わかりやすいーとか、いつもそうやってはぐらかしていくけど、そんな雨のことを私は嫌だとは思わない。
 どちらかと言うと、彼女の方から私を嫌うんじゃないかと考えてしまうくらいだ。


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