君のブレスが切れるまで
 §


 その日の夜、リビングの床に座りコンビニの弁当を食べながら、私は雨へ提案する。


「雨……ずっと、思ってたことがあるんだけど……」


 スプーンでドリアをつついていた雨がこっちを見て、首を傾げる。


「家具?」


 どうして私の言葉を先回りして言ってくれるのか未だにわからないけど、その通りだから頷く。


「うん……やっぱりダイニングテーブルくらいは欲しくない?」


 見渡す限り、白い壁紙以外のなにも見当たらないリビング。一応キッチンの方へ目を向ければ、大きな冷蔵庫は置いてあるんだけど……。


 12畳くらいあるこの大きなリビングルームは、いわゆるリビング・ダイニング・キッチン。言い換えればLDKと呼ばれるものなのだが、残念な事にテーブルが置かれていない。
 せっかくのLDKなのに、このままじゃLKだ。ダイニングキッチンとは呼べないだろう。
 だからこうやって今日も床に座りながら、夕食を食べている。


「そうね、買いましょう。実はここへ移り住んだのはいいけど、何を買ったらいいのかわからなくて、奏が教えてくれるならすごく助かる」
「え……いや、まぁ……」


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