君のブレスが切れるまで
「制服だからっていうのもあるのかもね。子どもだからって、あんまりよく思われてないんだろーけど、やっぱりそういうのは違うんじゃないかな」

 夏休みでもこのセーラー服でいるのは、ただ単に出かけ用の服がないから。いや、あるといえばあるのだが、セーラー服だとコーディネートを考える必要がなく楽だからである。
 嫌味を含んだように私は言いのけると、同じくセーラー服を着た雨も同調してくれるのか頷いた。


「誰もがそうやって色眼鏡で見て、侮る。良くないことね」
「……もしかして、雨もそういう経験があったり?」
「今がそうじゃない?」
「もー! そうやってはぐらかして!」


 雨と話している時はすごく楽しい。雨は結構冗談を言ってくれたりして私を和ませてくれるし、何より今欲しい言葉をよく言ってくれるから。
 少しだけ談笑しながら先程の店員への苛立ちもどこかに消え失せた頃、フロアの奥まったところで四人くらい座れそうな真っ白なソファを見つけた。
 私はすぐに駆け寄り、それに腰をかけてみる。


「わ、すごい柔らかい! お尻が沈むよ!」


 年甲斐もなくはしゃいでいると、


「ソファなんだから当たり前でしょう?」


 なんだかんだ言いながら、雨も隣へ座ってくれた。


「たしかに柔らかい。体を休めるにはいいかもしれないわね」
「でしょ? これいくらなんだろ――ひぇっ!」


 あまりのゼロの多さに、声が上ずってしまった。
 15まんえん……。ソファが高校生などには手を出せないものだと現実を突きつけられた私は、ゆっくりと腰を上げる。


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