君のブレスが切れるまで
『そうですねー。みんなー? 先生もこういってることだしあたしは先生のこと、信じてみようと思うんだけどどうするー?』
『えー! でも、あやかちゃんがそういうならー……』
『仕方ないなー。みんな戻ろうぜー』
『はぁい』


 そういって、みんなは教室の中へと戻っていく。
 廊下には先生とあたしだけが残されると、何を勘違いしているのか彼女はあたしに伝えてくる。


『あ、あの……彼氏はいないわ。これでいい?』


 くくく……馬鹿でしょ、あんた。本当に馬鹿だねー。
 でも、こんなところで笑ったりはしない。笑うにしても、もっと可愛く……ちゃんと子どもっぽく笑ってあげなきゃ。


『……そんなことは別にどうでもいいの。それより、せんせっ!』


 あたしは満面の笑みを作り、言葉を続ける。


『先生が楽しい授業にしてくれるの、信じてるからねー!』


 そういって教室へ戻り、自分の机へと着席する。先生には楽しい授業という本当の意味はわかっていないだろう。でも、あたしは信じている。
 あたしのおもちゃという本当の意味で、彼女が楽しい授業をしてくれると信じているのだ。
 だから、先生は人形みたいに簡単に壊れないでね。
 今日はこれくらいにして、あたしは大人しくおもちゃの言うことに従ってあげる。
 どの程度すれば壊れるのか、まだあたしには検討がつかない。できれば長く遊んでいたいのだ。


 だが、残念なことにこういったこと以外にも何度か先生と遊んでいると、宮村先生はいつの間にか学校へ姿を見せることはなくなった。
 そして代わりに新しい先生が補充される。その先生もまた若い。
 流石のあたしも、暫くの間は動くことを自重する。


 しかしあの快感を忘れられるわけもなく問題児認定されないようあの手この手を使い、新しく入ってくる先生を潰して回った。
 その度に補充される先生。女の先生ならメンタル面からじわじわと、男の先生ならロリコン疑惑を持ち上げさせる。そうすれば、先生たちは絶望に染まった表情であたしを楽しませてくれたのだ。
 次はどんなおもちゃが来るだろうと、あたしは小学校生活を心ゆくまで堪能し、優等生の肩書のまま卒業式を迎えることになった。


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