君のブレスが切れるまで
『一日でこんなに手に入ったなんて、あやか、マジですごいな……』
『でもあやかー。本当にいいの? あやかの取り分、もっと多くてもいいと思うんだけどー』
『別にいいわ。お金以上に楽しめたし、あたしたちは悪いことしてない。正義の執行と思えば面白いでしょ』


 正義の執行なんて、あたしにしては面白い言葉だ。スマホを操作しながら、あるメールアドレスへと送信した履歴を確認する。
 くくく、誰が約束なんて守るか。クズは現実の厳しさを学ぶべき、それがあたしからの正義の鉄槌ってやつだ。確認ができないのが残念だけど、積み上げてきた一人の人生をぶち壊してやったと想像するだけで笑えてくる。


『わっ、あやかの顔すっごい悪そう……もしかしてー?』
『くくっ、わかっちゃった? もちろん、家族と仕事場へ送ってやったわ』
『エッグいなぁ……あやかを敵に回したら怖そー』


 そんな談笑をしながらあたしたちはそれぞれの必要なものなどを買うことした。


 中学は主にそういう痴漢や盗撮を行ったおっさんを狩るというのをメインとして遊び回る。
 世の中から痴漢を撃退し、巻き上げたお金を使って社会に貢献しているあたしはまさに正義の味方だろう。


 正義の味方で思い出したが面白い馬鹿もいた、痴漢寃罪をしようとして失敗した馬鹿な二人組の女。一人は色白で大人しそうな、もう一人は焼けた素肌を持ったスポーツ少女のような子だ。


『あ、あの……ありがとうございます』
『まさか相手が弁護士の人だったなんて』
『目の付け所はよかったんだけどねぇ……これに懲りたら、やらないことを勧めるけど』


 この二人組をあたしらは路地裏まで逃したのだ。もちろんそれなりのリスクはあったのだが、これはあたしの気まぐれ。


『あのそれじゃ――』


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