君のブレスが切れるまで
 §


 駅前にまで来た。
 今日はこの前、野菜を買ったお店ではなく、その近くにある個人店のような小さなドラッグストアへと入る。


 空調の効いた店内、入り口は開きっぱなしになっているのにも関わらずこの涼しさ。
 恐らくエアコンを全開で可動させているのだろう。客の為というか、熱で薬が溶けたりしないようにする為かもしれない。


 私は店内をさまよい、目的の薬を探し当てる。
 私がいつも使っていた薬は解熱鎮痛剤、半分は優しさでできているという文句を謳っている商品だが本当かどうかは定かではない。
 ただ優しさという言葉に自分も優しくなれるような気がしてなんとなく好きだった。だから今日もこれを買う。


「後はスポーツドリンク……」


 私は場所を移し、清涼飲料の置いてあるところへと来た。前に雨が買ってくれたスポーツドリンクを二本、手に取る。


 これでよし、後はレジを通って帰るだけ。


 店員へ品物三点を渡し、金額が提示されると財布からお金を取り出した。


「よろしければ、こちらのサンプルを試していかれませんかー」


 店員さんがチラシを見せてくれるが、私はすぐに拒絶の言葉を吐いた。


「……いえ、結構です」


 こういう時に限ってそんな話ばかり、こっちは急いでいるというのに。
 私は店員から薬とペットボトルの入ったビニール袋を引ったくると、そのまま店を飛び出した。


「チッ……ありあとしたー」


 かすかに聞こえる舌打ちとやる気のない店員の声。
 自分の行動で誰に何を思われようが今はどうでもいい。家で待っている、苦しんでいる子のために私は必死なのだ。
 照りつける夏の太陽から目を守るように、額の辺りへ腕を掲げる。


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