君のブレスが切れるまで
「きゃあああああああああっ!」
「事故だ! 誰か救急車をー!」


 人々の叫び声が渦巻く大通り。
 私は道路を渡りきると、追って来ていたあやかの方を見る。


「はぁ……はぁ……ん……はぁ……」


 アスファルトの上に倒れている女からは大量の血が流れ、ピクリとも動かない。その光景に私は少しだけ、胸騒ぎがした。
 死んだ……? 死んだの?


 そんなことになれば事情聴取なんてことをされるかもしれない。ここがパニックになっている内に早く帰ろう。雨が……雨が待っているんだから。
 血溜まりから目を離し、人混みの中をかき分けていく。


 スッとした感情というのはある。いなくなってくれて清々したのだと思っているはず。だけど、少しだけ怖く思ってしまうのは、なぜなのか。
 マンションに帰りつくまでしばらく考え込んでいたが、とうとう答えを出すことはできなかった。


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