君のブレスが切れるまで
「辛いことがあったら、いつでも聞くわ」
「……雨は過保護すぎ」
「一応、奏の保護者なのだけど」
「あー! 今、私のこと子ども扱いしたでしょ!」
「私も奏も子どもでしょう? 何を言ってるの」


 確かにその通りだ、その通りなんだけど! やっぱり雨は私よりも大人っぽいので、頬を膨らませることしかできない。
 こういうところが、子どもっぽいのかもしれないけど。


「……うぅ……ぐうの音も出ないよ」
「ごめんなさい、ちょっと言い過ぎたかしら」
「ふぇーん、雨がいじめるよー」
「いじめてなんかないわ。もう、奏、からかわないで」


 こんな風に意地悪を言っても、雨は声色も表情の一つも崩さない。
 その無表情っぷりには慣れてしまったけど、別に感情がないってわけじゃないみたい。なんとなく楽しそうだーとか、嬉しそうだーとかいうのがほんの少しだけ読み取れる気がするのだ。
 それでも気がするだけ。私がそうであってほしいと思うだけで、意識的にそう見えるだけかもしれない。
 私は未だ彼女について何も知らないのだから。


 けれど、それでもいい。すべてを知らないと好きになれないかなんて、そんなことはない。
 だって、私はもう彼女のことが大好きで、大切な友達だと思っているのが何よりの証拠だと思うから。


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