君のブレスが切れるまで
『世界に病気の無い、健やかな未来を。ミヤノジョウグループは新薬の開発、その他、多くの分野にも――』


 朝食を食べ終わりお皿洗いを済ませると、私は白いソファへと寝転んだ。
 よく流れるCM。チャンネルを変えながらめぼしい番組を探してみるが、どこも今の時期はクリスマス一色。これが終われば次は年末、そして年明けと移り変わるんだろう。


「んー……プレゼント、どう渡そうかな」


 残念ながら、テレビの中に私が望む答えはない。集中するためにも電源を消して、静かな場で頭を捻る。
 そのまま『はい、どうぞ』と渡そうか? 論外だ。もしかしたら受け取ってくれない場合もあるかもしれない。
 なら、『日頃、お世話になってるから』と言って渡す? 無難ではあるけど、もう少しパンチがほしい。それにそんな言葉じゃよくしてくれたからのお礼であって、クリスマスのプレゼントとは違う。
 じゃあ『いい子の雨ちゃんには、私からプレゼントだー』……。


「流石にないでしょ……いくらなんでもパンチが効きすぎだって」


 自分で自分にツッコミを入れ、これ以上は無駄だと考えるのをやめた。
 そういえば、もうそろそろ雨が帰ってもいい時間だ。
 ソファから立ち上がり、ベランダの引き戸を開けると、


「うわっ! さっむ!」


 強い風が私の体を急激に冷やしていく。上階ともなると風はかなり強い。私は自分の体を抱くようにして、寒さを堪えながらベランダへ。


「雪……じゃないか、降り始めて間もなさそうだけど」


 空から少量の雨粒が降り注いでいる。本降りになる前に、雨には帰ってきてほしい。
 とりあえず、彼女が帰ってくる様子がないかベランダの手すりに捕まると下を覗いた。


「……懐かしいな、雨のアパートでもこんなことしたことあったっけ」


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