君のブレスが切れるまで
「えへへー」


 両手でほっぺたを押さえながら、私は思わずにやけていると。


「奏、随分ご機嫌ね」
「わかるー? 雨のこともたくさんわかったし、やっぱり意識の変化かもしれない!」
「でも何か隠し事してる気がするわ」
「えっ⁉」
「総一朗に何か話していたようだし、その内聞かせてくれると嬉しいわね」
「あれ、見られてたの……やっぱり雨って鋭い……」
「奏がわかりやすいだけなのだけど」


 そう言われて、気になっていたことが思い出された。
 そうだ、雨は私の心を本当に読めるのか。これを聞いてない。


「……本当は?」
「奏の心が読めるのよ」
「やっぱり読んでたの⁉」
「冗談よ。でも、奏の気持ちはわかる気がするから、読めていたのかもしれないわね」


 どこから本当でどこから冗談なのかわからない。雨は本当に掴みどころのない不思議な子だ。すごく真面目なのはわかるけど、こうやって冗談も言ってくれるからすごく話しやすい。


「よーし! 今何を思っているでしょーか!」


 私は顔をニコニコさせながら、荷物を片付けている雨を見つめる。


「私も片付けなきゃいけないのに、何やってるんだろー? かしら」
「それ! 雨の私に対する評価でしょ! って、わーっ! 私も片付け手伝うよー!」


 ほとんど片付けられた荷物を見て、私は慌てて雨と共に片付けを始めるのであった。


 §


< 234 / 270 >

この作品をシェア

pagetop