君のブレスが切れるまで
「おでこ……。この程度なら、ぶつけて怪我したくらいで通るかな。……なんて、そんな心配しなくても誰も気にしないよね」


 額の消毒が終わり、固まっていた血を綺麗に拭う。染みる際の痛みにも慣れてしまった。適当な大きさに切ったガーゼを額に当てるとテープで固定し、体の痣にも湿布を貼っていく。
 手慣れたもの。これなら誰が怪我をしても、すぐに応急処置くらいはできるだろう。そもそも、そんな相手すらいないけど……。


「そうだ、定期のお金……」


 当初、考えていたことに頭を切り替える。ポケットからスマホを取り出すと、画面を指で滑らせ、求人情報を探していった。
 どれもこれも似たようなものばかり、コンビニのアルバイトや倉庫内作業。


「……こんな時給じゃ足りない」


 高校生は通常のフリーターよりも、数十円低いところが多い。それどころか、十六歳を雇ってくれるところなんてほとんど見つからない。


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