君のブレスが切れるまで
 両手でスマホを持つ。
 いけ、いけ! ただ押せばいいだけ、たった押すだけなんだ!
 そう自分に言い聞かせるように、私は歯を食いしばる。


 震える指が時間を掛け、ようやく投稿のボタンを押す事を許してくれた。
 光る端末の中に先程書いた文字が浮かぶ。
 戸惑った時間と同じだけの恐怖が押し寄せてきた。私はスマホをスリープ状態に移行させると、畳の上へと置く。


 暗い部屋の中で座ったまま、両膝を立てるとそれを抱くようにしてひたすら返信を待つ。
 部屋は静まり返り、外からは雨の音がポツポツと聞こえていた。明日も雨かもしれない。


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