君のブレスが切れるまで
第3話 冷たい交際
待ち合わせ場所は家から近い、最寄りの駅だ。
外は街頭があるおかげで少しだけ明るかった。でも、この下り坂は少しだけ細い。二台の車がすれ違うのはちょっときついかな? というくらい。
傘を少しだけ上げ、空を眺めてみる。星空もなにも見えない、今日はもう止まないだろう。
シトシトと空から降ってくる雨とは違い、電線から落ちる大粒の水は、傘に当たるとひときわ大きな音と振動を与えてくる。
たったそれだけなのに、私は恐怖を感じてしまう。暴力を受けた後はこんな調子だ。急に鳴る、少し大きな音だけでも怖かったりする。
電線の下は通らないようにしたい。だけど、もし急にクラクションなんて鳴らされたら、心臓が止まってしまうんじゃないだろうか?
「でも、それもいいかな……」
私は後ろも見ずに、道の真ん中へ飛び出す。
けれど、いつも邪魔な車は今日に限って通らない。ずっと、ずっと歩いても通らない。運がいいのか悪いのか。でも、きっとクラクション程度じゃ死なないってことを私は知っていた。
§
駅に到着する。快速が止まるこの駅は人通りが多い。
青、赤、黒、色々な傘とスーツがうごめいているこの中で、例の人を見つけられるのだろうか?
まだまだ体の痛みは残っている。だけど、時間通りには着けたはずだ。私は濡れないよう駅の屋根の辺りに立ち止まり、傘を畳んでスマホを取り出した。
メッセージが届いている。『今着いた、服装を教えて』と。
すぐに私は返信する。黒のセーラー服であることと、青い傘を持っていること。そして、髪を何度かかき上げる仕草をする……と。
その結果、思ったよりも早く話しかけられることになった。
「つぐみちゃん?」
外は街頭があるおかげで少しだけ明るかった。でも、この下り坂は少しだけ細い。二台の車がすれ違うのはちょっときついかな? というくらい。
傘を少しだけ上げ、空を眺めてみる。星空もなにも見えない、今日はもう止まないだろう。
シトシトと空から降ってくる雨とは違い、電線から落ちる大粒の水は、傘に当たるとひときわ大きな音と振動を与えてくる。
たったそれだけなのに、私は恐怖を感じてしまう。暴力を受けた後はこんな調子だ。急に鳴る、少し大きな音だけでも怖かったりする。
電線の下は通らないようにしたい。だけど、もし急にクラクションなんて鳴らされたら、心臓が止まってしまうんじゃないだろうか?
「でも、それもいいかな……」
私は後ろも見ずに、道の真ん中へ飛び出す。
けれど、いつも邪魔な車は今日に限って通らない。ずっと、ずっと歩いても通らない。運がいいのか悪いのか。でも、きっとクラクション程度じゃ死なないってことを私は知っていた。
§
駅に到着する。快速が止まるこの駅は人通りが多い。
青、赤、黒、色々な傘とスーツがうごめいているこの中で、例の人を見つけられるのだろうか?
まだまだ体の痛みは残っている。だけど、時間通りには着けたはずだ。私は濡れないよう駅の屋根の辺りに立ち止まり、傘を畳んでスマホを取り出した。
メッセージが届いている。『今着いた、服装を教えて』と。
すぐに私は返信する。黒のセーラー服であることと、青い傘を持っていること。そして、髪を何度かかき上げる仕草をする……と。
その結果、思ったよりも早く話しかけられることになった。
「つぐみちゃん?」