君のブレスが切れるまで
「ふぅ……ふぅ……」


 男の息はなぜかしら上がっている。だけど、私はそんなことよりも足先の痛みが気になった。ズキズキと酷く痛む。無理して歩きすぎた証拠だ。


 少し座りたい、早く休みたい。


 私は気を紛らわそうと、扉の上にある数字の書かれたパネルを見た。2、3、4と数字が上がり、少しだけ重力を感じると扉が開く。
 先に男が降りると、私もそれを追うように着いていった。綺麗な廊下で、一階に比べるとそれなりに明るい。


「ここだよ」


 チカチカと点滅する扉の上の部屋番号、その前で男は立ち止まっていた。
 私に開けさせたいのか、それとも先に入らせたいのだろうか、自分からは入ろうとしない。
 おずおずといった具合だけど、聞いてみる。


「入っても……?」
「うん」


 私は男に許可を取ると、ゆっくりと扉に手を掛け、引く。
 思ったより、重い扉だ。青痣だらけの体には少々きつい。
 痛みに耐えつつ扉を開くと、そこはマンションの玄関のようになっていた。二人分のスリッパも置かれている。


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