君のブレスが切れるまで
　後ろから抱きしめられ、不快な猫なで声で囁く。その言葉とこの場所、馬鹿な私は、ようやく自分が置かれた状況を悟ることになった。そして、男が私に何を望んでいるのかを。


　頭の中で警告音が鳴り止まない。逃げなきゃと思う反面、金縛りにあったように体は重く動かない。息が上がる、酸素を取り込みすぎて頭がクラクラする。高鳴る心音が、頭の警告音と共に私を焦らせた。
　急に体が浮く。痛みが走り、自分が抱き上げられていることに気づいたときには既に遅く、そのままベッドの上へと降ろされていた。
　そこでやっと私の喉から声が出てくれる。


「ま、待ってください！　違うんです！　そういう意味だとは思わなくって……」
「三万払うんだから、良いだろ？」


　男が言葉と同時に私へと覆いかぶさってくる。
　押し返そうと思ったが、男の体は予想以上に重くて力も強い。押し返すどころか、動くこともままならず、逃げられない。


　嘘……嫌だ、やだやだ……。嘘だ、こんなはずじゃなかったのに……怖い、怖い怖い怖い！


「や……やめ……てください……こんなのいやぁ……」


　暴力とは違う恐怖感に襲われ、私はわけもわからず泣きじゃくる。
　こんなことをするつもりはなかった。メッセージには遊びだって書いたはずなのに、どうしてこうなるの？　この人を少しでも信じたから？　もっと別の人なら良かった？
　そんな後悔の念だけが次々と浮かんでくる。
　だが、男は泣き続ける私に苛立ったのか強い口調で言った。


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