君のブレスが切れるまで
「うるさいガキだな……金が欲しくないのかよ!」
「ひっ! ……いや! いやぁぁぁ!」


 私は首を振りながら叫び続ける。これしか手がないのだ。だけど、もし……殴られたら?
 途端に私は叫ぶのをやめて、口を塞いだ。叔父に教え込まれていたことが蘇り、熱かったはずの体が冷えていく。まるで血が逆流するかのように。
 叫んだら酷くされる――その恐怖に私の体は支配されてしまった。
 もう……諦めよう。その言葉が頭の中に流れ、そちらへと意識が傾く。だけど、せめてもの抵抗だったのだろう。自分が汚されるのを見ないようにするため、私は腕で顔を覆っていた。
 だが、ふと気がつくと体を押しつぶすような体重を感じなくなっていた。


 ……? 一体、何が起こったの? 誰かが助けてくれたの……?


 それでもしばらくは恐怖で動くことができなかった。


「は……うぅぅ……う……?」


 言葉にならない声と一緒に私は、顔を覆った両腕をおそるおそる離していく。そして男を探した。


 いる。
 まだベッドの上、誰かが助けてくれたわけじゃない。この人がただ私の上から退いただけ。
 男は呆然とした面持ちのまま、私の体を見ていて、視線に気づいたのか急にこちらを向く。


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