君のブレスが切れるまで

第4話 赤い傘

 無我夢中で走った。
 男が追ってくることはないと分かっていても、もしかしたら気が変わるかもという不安があったためだ。夜の街を逃げるように走り続ける。足の痛みがほとんど気にならない、それほどに焦っていた。
 本当なら二度、三度に分けて手に入るはずのお金が、今日一日だけで手に入ってしまう。けれど、言ってしまえばこれは汚いお金。
 これがあれば一ヶ月程度の定期なら買えるだろう。でも……もしこれで定期を買ってしまえば、使う度に今日のことを思い出しそうな気がする。


 あの建物から出た時より雨が強くなっている。ここまでくれば大丈夫だろうか? 街頭も少なく薄暗い路地で、少し屋根が出ている建物を探すと、私はそこで雨宿りを始めた。


 傘を忘れてしまった。
 名前も何も書いていない傘だから私の名前等がバレるはずはないが、こんな雨の中で傘を失ってしまったのは想像以上に痛手。


 このまま雨に濡れ続けるのは不味い、明日、学校に着ていく服がなくなる。
 制服だと相手に受けが良いとのことだったけど、これでは自分がどこの高校かバレてしまうんじゃないか? でも、写真を撮られているわけではない。けど、心配。ところどころで徹底できてない自分の甘さが嫌になる。
 一瞬、強い風が吹き、雨が横殴りになった。


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