君のブレスが切れるまで
 また制服を着てきたことが仇となり、顔を歪めてしまう。
 叔父は帰ってきてもお酒を飲むだろうから、明日になれば忘れているだろうと少し期待してたけど、このままじゃ寝るところすらも確保できない。
 やっぱり、帰るしかないのかな。


 もう夜の九時を回っている。
 私はスマホをポケットへと戻すと、反対の手で握りしめた一万円札を見つめる。お金を稼ぐのって、思ったより大変なんだなと身に沁みた。
 雨は止む気配がない。少しでも早く帰って、叔父が帰宅してないことを祈ろう。
 私はその場を離れようとしたその時――


 何者かに腕を掴まれる。
 ゾクリと背中に冷ややかな汗が流れ落ちるのを感じ、恐怖で体が動かなくなった。まさか、気が変わって私を追って来た……?


 恐怖に取り憑かれながらも、ゆっくりと振り返る。
 しかし、私の予想は大きく外れていた。
 振り返った先には傘を差した三人の女生徒、そして聞き覚えのある声。


「やっと見つけた。(かなで)ちゃーん」


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