君のブレスが切れるまで
 その声は私の顔に、もっと大きな恐怖を張り付けていく。
 なぜ、この三人がここにいるのかわからなかった。今日は驚くほど知っている人に会う。見られたくないときに、会いたくないときに限って知ってる顔が何度も何度も。


 あの赤い眼の女の子だってそうだ。あれは本当に見間違いだったのだろうか?


「離し……て!」


 とにかく逃げなければと私は掴まれた腕を振り払う――が、グッと握られたその腕は容易には振りほどけない。


「まぁ……落ち着きなよ。いいもの見せてあげるからさ」


 それはどす黒い感情の籠もった低い声。


 いいものって……なに。


 どう考えても、私にとっていいものではない。
 じゃないとそんな悪そうに笑ったりしないし、爪が食い込むほど私の腕を握ったりしない。


「さっきおじさんと手を組んで歩いてたよね? ほら」
「じゃーん」


 スマホの画面を見せつけてくる。そこには、私とさっきの男が仲良さそうに歩いている写真が撮られていた。血が逆流しそうな勢い、血の気が引くというのはこのことか。


 言えることは唯一つ、肯定するわけにはいかない。頷けば終わる。だから、必死で否定を示した。


「ち……違う……私じゃ……」


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