君のブレスが切れるまで
 ようやく先生の話が終わり、これから放課後となる。
 私は立ち上がり、窓際一番前の席に歩いていく。もちろん、宮城さんに話しかける為だ。勇気を振り絞って、私は声をかけた。


「あ、あの……」


 おずおずといった具合だが声が出て、彼女は振り向いてくれる。


「……? 確か、赤坂さんよね。どうしたの?」


 彼女はもう帰るところなのかカバンを持っていた。
 私の事を覚えていてくれたんだ。でも、先に名前を言われてしまい、私は彼女の名前を呼ぶタイミングを無くしてしまう。


「え、えっと……朝はごめんなさい。ぶつかってしまって」
「大丈夫。あれはもう終わった話でしょう?」
「う、うん……」


 相変わらず宮城さんは無表情なままで、迷惑に思っているのかと錯覚してしまい、ちょっと言葉が詰まる。
 でも、もう少しだけ何か話したい。


「……ごめんなさい。話したいのは山々なのだけど、今日は急ぐ用事があって早く帰らなくてはいけないの」
「あっ、そうなんですね。ごめんなさい」


 話したいと顔に出ていたのだろうか、用事があるのに時間を取らせてしまった事に申し訳なく思い、つい謝ってしまう。


「いつになるかわからないけど、今度ゆっくりお話したいわ。それじゃ」
「は、はい! また明日」


 彼女は会釈してくれて、私の隣を通り過ぎていった。
 私と今度ゆっくり話したいって言ってくれるなんて良い人だな。名残惜しいけど仕方ない、私も帰ろう。明日になればまた会えるんだから。
 まだクラスメイトが多く残る教室を私は後にする。


< 5 / 270 >

この作品をシェア

pagetop