君のブレスが切れるまで
 声が震える。思ったより大きな声が出せない。


「たまたまあんたを見つけてさ。ホテル前で張ってたんだよね。そしたら、逃げるように走ってくし見つけるの大変だったわ」
「まぁ、言わなくてもわかるけど、これ援交だよねー」
「ちょっと遊ぼうよ奏ちゃん。まさか断るなんてしないよね?」


 私の否定の言葉は届かず、次々に話しかけてくる女生徒たち。
 あの赤い眼の女の子以外にまだ誰かがいるとは思わなかったし、まさか写真まで撮られているなんて……。目の前が真っ暗になる感覚だ。


 そうだ……この人たちの言葉を断れるわけがない。違うと言っても、あの写真の中の女はどう見ても私だった。


 もし断れば、写真はどうなるの? ネットに上げられて、拡散される? それは困る。高校だって退学になるかもしれない。言葉に詰まってしまい、私は何も言うことができなくなる。首を横に振ることができず無言のままでいると、女生徒たちに人通りのほとんどない路地裏に連れて行かれることになった。


 どうして私ばかりこんな目に合うんだろう。あぁ……死にたい、死にたいよ。


 全てが終わった後、家に帰れば、きっと叔父は既に帰っているだろう。
 私が遅く帰ってきたということに殴られるのは確実。そしてギャンブルで負けていれば、更に機嫌が悪い。お酒を飲んでいたら、どうなるだろう……殴り殺される? 今でも十分満身創痍だ。これ以上殴られたら、本当に死ぬかもしれない。


 でも、私は知っている……人間って、なかなか簡単には死ねないんだってことを。


< 50 / 270 >

この作品をシェア

pagetop