君のブレスが切れるまで
　言葉を待たず、私は苛立ちのまま彼女の横を通り過ぎる。
　でもどこかで、私は彼女に手を取られることを期待していた、彼女は私を初めて助けてくれた人だ。もしかしたら……本当に私を救ってくれるかもしれない。そんな淡い期待があった。


　でも、そんなの信じない。そんな甘い話があるわけがないのだ。彼女がさっき助けてくれたのは、ただの運命の気まぐれ。三つのサイコロを振って、六の目が三つ出るのと同じようにただのまぐれなのだ。


「待って」


　その声に驚いたの。彼女は私が期待していたように、私の冷たい手を優しくとってくれたから。
　でも、私はその声を聞かなかった。そして、止まらなかった。だってこれはきっと、まやかしだから。


　聞いてしまえば、私はおかしくなる。
　私は全ての考えを打ち切り、手を振り払うと逃げるように雨の降る街を走った。地面を踏みしめる度、つま先が痛む。体のどこもかしこも痛む。でも、死ねばこの痛みともさよならできるんだ。


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