君のブレスが切れるまで
 屋上の扉に手を掛ける。開いた、珍しく運がいい。普通なら防犯上、閉まっているだろうが開いている。この時だけは、きっと私は笑っていたと思う。


 雨が吹き荒れている。その中を一歩一歩、進んでいく。


 あぁ、もうすぐだよ……もうすぐ私は死ねる。願いが叶う。何度、死にたいと思っただろう……やっと行動に移すことができるんだ。


「はぁ……はぁ……」


 私は両手で胸を押さえると、トクントクンとすごい速さで脈打つ音が伝わってくる。


 辛かったね、すぐに終わらせてあげるから。


 ビルの縁に立つと、はるか下に地面が見える。
 ここは八階、思った以上に高い。でも、これだけの高さがあるなら落ちれば絶対に助からない。


< 61 / 270 >

この作品をシェア

pagetop