君のブレスが切れるまで
「っ――!」


 その瞬間、目の前が真っ白に染まるほどの稲光と凄まじい轟音が辺りに響き渡った。


「ひっ! いやぁっ!」


 強烈な音に私は足を引っ込めてしまい、屋上の縁から引っ張られるように内側へと引き寄せられ、尻もちをついてしまう。


 な……何……雷? え?


 違う。雷に驚いただけなら足を滑らせて落ちていてもおかしくなかった、誰かが私を引っ張ったんだ。
 何かの気配を感じ、私は後ろを振り向く。


「…………」


 赤い眼の女の子が黙ってこっちを見つめている。
 追ってきてる様子なんて全く無かったのに、どうしてここがわかったの。そんな彼女を見ると、死ぬのを邪魔されたような気がして私は腹がたった。


「なんで……余計なことするの」
「死んで欲しくないから」


 予想外の言葉に私は唖然とし、すぐに疑問を投げかける。なぜ、この人が私にここまで言うのかを。


「は……? 私が死にたいって思ってるの知ってるんだよね? 貴女と話したことなんてほとんどないはずだけど――」
「生きるのが辛い? 今の生活が変われば生きられる?」


 私の言葉を遮って、彼女は静かにそう言う。


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