君のブレスが切れるまで
「……(あめ)よ。――(あめ)


 落ちていく意識の中で、声が微かに聞き取れた。
 雨? まだ降っているのかな?
 家の中でもシトシトと、雨音がまるで子守唄のように耳へと入ってくる。だけど、私は彼女の言葉を理解できたのかもしれない。


「雨……いい名前だね。今日は、ありが……とう。雨……」


 無意識の内に言った言葉は、きっと私の素直な気持ちだった。
 最後まで彼女の顔を見ることはできず、記憶はそこで一旦途絶えてしまう。


 真っ暗な夢の中でも、胸は痛み続ける。
 きっとこの痛みは、私が『信じない』と選び、彼女から『信じてる』と言われた時から始まったのかもしれない。けど、信じないの。絶対、ぜったいに信じない。


 死にたいのは、変わらないんだもん。
 またきっと、辛い明日が来る。明日から逃げられない……だからもう、死にたいんだ。


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