君のブレスが切れるまで
「奏のことが心配なの」
「…………名前で呼んでなんて言ってない」


 この子は本当に心を読んでる気がする。それか私の表情がわかりやすいだけだろうか?
 でも、名前を呼ばれて嬉しかったのは本当で、私は彼女と顔を合わせないように壁側を向く。


「私も……雨って呼んでいいかな?」


 なにを言ってるんだ私は。
 昨日の夜、最後に名前を呼んだからって、こんなのはおかしい気がする。あーもう! この子に上手く乗せられてる感じがして、心が乱される!
 しかし一度言った言葉、話は続けられることになる。


「ええ、もちろんよ。奏」
「私は許可してない」


 子どもの駄々っ子のように私は言いのけた。馬鹿みたいだって自分でも思ってしまって、余計罪悪感が増す。


 ――今なら訂正できる。昨日だって、それで後悔したでしょ。訂正しなきゃ。


 自分に訴えかけ、彼女へと訂正を申し出る。


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