君のブレスが切れるまで
 せっかく雨が洗ってくれたセーラー服。それをわざわざ汚すまでもないと、私は紙袋へ戻し、玄関へと歩いていく。
 傘はない、雨はちゃんと持っていったのだろう。とにかくセーラー服を着ても、濡れるような場所までは出られなかったということだ。先に着替えなくてよかった。
 包帯が巻かれた右足指を庇いながら、左足だけローファーを履く。玄関の鍵を開けると片足のみを上げ、ケンケンパの要領で外へと出てみた。


 ザァァと降り注ぐ、雫の音。目の前の錆びた手すりに軽く片手をついた。
 二階から下を覗くと、一階部分は舗装がされてない砂利の空き地。少し奥へと目を向ければアスファルトの狭い道路が左右に伸びているが、周りは家だらけでその道路まで出ないことには見通しが悪すぎる。
 その場で5分ほど待ってはみたものの、やはり帰ってくる気配は全くない。
 諦めて家に入ろう。完全に風邪が治りきってるわけじゃないみたいで、雨粒の降る外の気温は少しだけ肌寒い。


 部屋に戻ると、ふと雨が書いてくれた電話番号の紙を思い出した。それともう一つ、スマホのことも。


「確か服に入れてたよね……」


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