君のブレスが切れるまで
 紙袋の中を探ってみると、すぐに見つかる黒いスマホ。けれど、充電がないのか画面が点かない。
 充電器は確か、机の下のコンセントに刺さってたはず。
 しゃがみ込むと、ちゃんとあった。私はそれをスマホに差し込み、充電のランプが点くことに安心する。雨のことだからそのまま洗濯機に入れたりはしないだろうけど、もし入れられてたりしたら防水でも危なかったかもしれない。
 そんなことを思っていると、ふと一つの変な考えが浮かんでくる。


「なにが雨のことだから……よ。あの子のことについて、何も知らないのになんでそんなこと思ったの、私は」


 さっきからおかしい考えばかりだ。約束を違えるとは思わないだとか、彼女のことだからだとか。ただ、なんとなくそう思ってしまったのは少しでも信じる気持ちがあったから?
 信じないって決めてたでしょ、とその意識を振り払うようにスマホの電源を入れる。
 今日はあの子のことで頭がいっぱいだ。考えてみればここはあの子の部屋なのに、私が一人でいること自体が間違っている。それなのにあの子は何も言わず、私をこの家に置いてくれた。そこまで信用してくれてる意味がまだわからない。


 紙に書かれた電話番号と、画面の点いたスマホを交互に見る。


 心配してるわけじゃない、それに今は授業中だ。電話をかけるのは雨の迷惑になるかもしれない。けど、なぜ帰ってこないかが気になる。


 かけようかどうか……そんな葛藤していると、スマホに連続でメールが届いた。


 指を滑らせ確認してみると、電源が切れていた時に着信があった場合の連絡メール。
 メールは数十件……全て同じ電話番号からかけてきてる。番号は雨が書き写してくれた番号とは一致しない。でもこれには見覚えが――


「――ひっ!」


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