政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 私も家族で何度か利用したことがあるけど、さすがに当日予約ナシに来たことはない。さすが笹野さんだ。
 
 通されたのは奥の個室。私と零士君が並んで座り、テーブルを挟んで笹野さんがひとりで座った。

「まずはシャンパンで乾杯しましょ」

 笹野さんがそう言うと、スタッフがシャンパンを私たちのグラスに注いでくれた。

「これからも素敵な交流を持てると願って、乾杯」

 乾杯を皮切りに、次々とコースの料理が運ばれてくる。

 その間、一方的に笹野さんが話を振ってきて、私と零士君が答えるということが続く中、笹野さんは私にはわからない仕事の話を零士君に振った。

「そういえば零士さんはご存知ですか? この前お話した例の会社、やはり買収に乗り出そうとしているようですよ」

「そうなのか」

 これには零士君も目の色を変えた。

 笹野さんはただの社長令嬢じゃない。後継者のひとり娘として、大学生にもかかわらず、融資を受けて自分の会社を設立した。

 その手腕はメディアに大きく取り上げられている。
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