政略結婚から始まる蜜愛夫婦～俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない～

　だから本当に結婚する前は、笹野さんのほうが零士君に見合うと思っていたんだ。

　でも今はそんなこと思えない。仕事の話を白熱させるふたりに入っていけないことが悔しくて寂しい。

　むしろ私は邪魔でしかないのでは？　とさえ思う。

　黙々と料理を食べ進めていると、笹野さんがわざとらしく言った。

「やだ、私ったら凛々子さんがいることも忘れて零士さんに仕事の話をしちゃって。すみません、凛々子さん。退屈だったでしょう？」

「いいえ、大丈夫です」

　平然を装う私に、零士君も「ごめん」と謝ってきた。

　謝らないでほしい。惨めな気持ちになるよ。

「ううん、大丈夫だから。私のことは気にせず話を続けて。こういう機会でもないと、なかなか話せないことでしょ？」

　精いっぱいの強がりを見せると、笹野さんは「凛々子さんもこう言ってくれていますし、話を続けましょう」と言った。