政略結婚から始まる蜜愛夫婦～俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない～

「当然の報酬でしょ？　貴重な時間をお兄ちゃんに割いてあげるんだから。もちろんここの一番高いコースを頼んでもいいよね？」

「好きにしろ」

　そう言うと千鶴は「わーい」と言って、さっそく店員にランチコースをふたつ注文した。

　すぐに運ばれてきた前菜を食べながら、千鶴は口を開いた。

「凛々子ちゃんから聞いてるよ。綾子と三人で食事をしてきたんだって？」

「あぁ、不可抗力でな」

　俺もフォークを手に料理を口に運ぶと、千鶴は深いため息を零す。

「お兄ちゃんのバカ。綾子の思うがままに動いちゃって。どうしてはっきり断らなかったのよ」

「断ったさ。でも凛々子がいいって言ったから。……それに相手は最大の融資先だし、お前の友達でもあるだろ？」

　綾子と千鶴は同い年ということもあって、よくふたりで話しているのを見かけていた。それに家にも何度か遊びに来たこともあり、自然と俺も綾子と話す機会が増えていったんだ。

　だからてっきり千鶴と綾子は友達だと思っていたんだが、どうやら違ったようで千鶴は嫌悪感を露わにした。