政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
『今夜頑張って』

「ありがとう、頑張るよ」

 最後に『明日報告を待ってるよ』と言われて通話を切った。

 私はそのままスマホを胸に当てる。

 千鶴ちゃんに勇気をもらったんだから、本当に頑張らないと。

 この頑張りが廉次君との未来に繋がっていくと信じたい。

 そうと決まれば、残りの家事を片づけて夕食のおかずも買いにいかないと。

 急いでアイロンがけをして、お風呂掃除を済ませ、マンションの地下通路を通った先にあるスーパーへと向かった。



「少し買い過ぎちゃったかも」

 両手にエコバッグを持って来た道を戻っていくと、見えてきたマンションのロビーへと続く道。

 そしてロビーに出ると、コンシェルジュがいるカウンターが見えてきた。

 いつものように挨拶をして通り過ぎようとしたけれど、カウンターにいる人物を見て目を疑った。

「笹野さん?」

 信じられなくて声に出してしまうと、私に背を向けてコンシェルジュと話をしていた笹野さんが気づき、振り返った。
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