政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「ごめん、千鶴ちゃん。手を洗わせて」

「どうぞ」

 洗い物をしてくれていた千鶴ちゃんは横にズレてくれた。ていねいに洗っていると、なぜか感じる視線。

「えっと、千鶴ちゃん?」

 ジッと無言で見つめられると心配になる。なにか私、変なところがあるのかな?

 手を洗い終えてタオルで拭いていると、千鶴ちゃんの顔はみるみるうちに赤く染まっていく。

 そして気まずそうに自分の首の後ろを指差した。

「凛々子ちゃん、気づいていないでしょ?」

「え? なにが?」

 首の後ろがどうしたんだろう。ケガしているとか?

 だけど自分では見えない場所でわからない。すると千鶴ちゃんは恥ずかしそうに言った。

「お兄ちゃんによーく言っておいたほうがいいよ。見えるところには、痕を付けないでって」

「痕って……」

 キョトンとなるものの、すぐに理解する。首の後ろには零士君付けたキスマークがあるのだと。

 今さらながら遅いとわかっていても、手で隠したくなる。
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