政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 その考えにいきついたけど、すぐにそんなことないと否定する。だって私は零士君に嫌われているもの。

 最上階に着くと、ドアが開いた先にある部屋の前で足を止めた。そしてカードキーをかざしてドアを開けると、間接照明が自動で点灯する。

 器用に私のパンプスを脱がせて廊下を突き進んでいく。

 その先の部屋に入ると、大きな窓の向こうには都内の夜景が広がっていた。

 零士君は優しく私をソファに下ろすと、隣に腰かけた。そして苦しげに私を見つめた。

「あいつの本性を知りながらも、凛々子に本当のことを言えなかったのは、お前が幸せそうだったからだよ。それに、絶好のチャンスだと思ったんだ。傷ついた凛々子を助ければ、俺を好きになってくれるかもしれないって。……俺のほうが最低だろ? お前が傷つくことを知りながら、その瞬間をずっと待っていたんだから」

 乾いた笑い声を漏らすと、零士君は優しく私の身体を包み込んだ。

「好きでたまらなかった。凛々子が可愛くて、愛おしくて大切で……。怖くて触れることもできなかったんだ」
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