政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 言葉通り、私を抱きしめる彼の手はぎこちなくて、少し震えている。

 でも本当なの? 零士君が私を好きだなんて。

 すぐには信じることができなくて聞いた。

「零士君、私のこと嫌いじゃなかったの? だって子供の頃は意地悪だったし、大きくなったら冷たくなって目を合わせてくれなくなったじゃない」

「それはっ……」

 零士君はなにかを言いかけて言葉を詰まらせる。

「それは俺も後悔している」

 ゆっくりと身体を離され、そのスピードに合わせて彼を見上げた。

「だからこれからは後悔したくない。ずっと好きだったんだ。婚約解消なんてしないから。お前のこと、絶対に離さない」

 力強い瞳に射貫かれ、胸がギュッと締めつけられる。

 目を離せずにいると彼の顔が近づいてきて我に返った。

「待って、零士君」

 慌てて彼の口を両手で押さえた。

 だってこれ、キスの雰囲気だよね。

 零士君とは幼い頃から婚約関係にあったけど、キスどころか、手を繋いだこともなかったのに。

 いきなり抱きしめられてキスなんて無理。心が追いつかない。
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