政略結婚から始まる蜜愛夫婦～俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない～

　あいつと出会ってから凛々子は変わった。俺と一緒にいてもどこか上の空で、時折スマホを見ては幸せそうな顔をする。

　悲しくなり、怒りが募る一方で、どれだけその男が凛々子を愛そうとも、最後に凛々子を手に入れるのは俺だ。

　だったらひと時だけでも凛々子との幸せな日々を過ごせばいい。

　そんな歪んだ感情を抱きながら静観していたある日、千鶴から深刻な顔をして相談された。

　凛々子が相手を本気で好きなように、向こうも凛々子のことを愛していると思っていた。

　しかし違ったのだ。あの男は凛々子を愛してなどおらず、ただ利用しているだけだった。
　千鶴から聞いた時は、はらわたが煮えくり返る思いだった。

　凛々子の気持ちを利用して、なんて最低な男だろうかと。でも凛々子はそんな男を本気で愛していて、幸せそうで。

　千鶴に「お兄ちゃんが早く凛々子ちゃんに好きって言わないからだよ」って怒られたが、俺も千鶴も、ただ様子を見守ることしかできなかった。

　凛々子を悲しませたくなかったし、傷つけたくなかった。凛々子があいつを嫌いになれば一番よかったのに……。